SADO TEMPEST 映画「佐渡テンペスト」公式サイト

作品情報

監督コメント Director's Statement

2009年に佐渡を訪れた私は、ちょっとしたスランプに陥っていました。2本の映画のプロジェクトが無くなり、リーマンショックのせいで日本の映画界の状況が悪くなってしまったからです。そんな時、たまたま佐渡の原生林ハイキング・ツアーに参加することにしました。山に登り、数時間かけて島の内陸部を歩いて、美しい杉の木々が風の力で奇妙な形に曲がっているのを見ました。すると突然、落ち込んでいた気分が治ったのです。自分の抱えている問題はこの杉の木たちの寿命に較べたらなんてちっぽけなんだろう。自分はこの先も映画を作り続けることが可能だと閃いたのです。この樹々をいつも胸に思い抱いていられるなら、負けるなんて思うことはないだろうと。

その後2年間、私はプロデューサーの塩崎祥平とともに佐渡を20回以上訪れました。その度にこの土地は私に不思議な感覚をもたらしました。島は能の笛と太鼓のような“不思議な音と音楽”に満ち溢れていました。私が生まれながらに親しんできたシェイクスピアの『テンペスト』さながら。 私はすぐさま佐渡で『テンペスト』を作ることを思い立ちました。順徳天皇が流罪になったという話に強い興味をそそられもし、あらゆる要素がミックスされてゆきました。エリザベス女王の時代の物語を佐渡の深い歴史に根ざした文化で再現する“ディープな不思議さ”を包含した“ロックと能によるハイブリッド・ムービー”構想です。

日本文化を図式的に考えるなら、唐突過ぎる組合せと思われるかもしれません。しかし、この大胆な混合能力こそが、私が日本を愛してやまない理由のひとつです。複数の文化やスタイルを、矛盾も困惑もなく、同時に吸収し、かつ順応させる能力。そのやり方に倣おうとしたのです。

佐渡はアウトサイダーとしての長い歴史と、文化的多様性を持ち合わせた複雑な(ハイブリッドな)地域です。『佐渡テンペスト』は、文化の多様性を寿(ルビ・ことほ)ぐ映画であると同時に、いまの日本のメインカルチャー的視点からみると文化的に不毛な地域と見られているという皮肉も込めました。

この映画は近未来の話ではなく、今の日本を描いているのです。

監督・脚本:ジョン・ウィリアムズ
Director and Screenplay:
John Williams

監督・脚本:ジョン・ウィリアムズ 1962 年、イギリスSt.Albans生まれ。ウェールズで大部分を過ごした幼年時代、毎週土曜日午前中は映画館に通って過ごす。 14歳で16mmカメラを手に映画を撮り始める。ケンブリッジ大学でフランス文学とドイツ文学を専攻する傍ら、映画と演劇に夢中になる。’86年から2年間ロンドンの高校でフランス語の教師として働いた後、’88年来日。以来日本在住。’95年百米映画社をスタート。2001年、監督・脚本をつとめた長編劇映画『いちばん美しい夏』で劇場デビュー。本作は、佐藤浩市主演『スターフィッシュホテル』(’07年)に続く、長編劇映画監督三作目となる。上智大学准教授の顔も持つ。

撮影:早野嘉伸 Cinematographer:Yoshinobu Hayano

1951年、岐阜県生まれ。名古屋在住。揺るぎないフレーミングに丹精な質感を込めるこだわりの撮影スタイルで、普段はCM、VP、テレビなどを中心に様々な分野で活動。ジョン・ウィリアムズ初監督『いちばん美しい夏』で映画撮影デビューと同時に優れた新人撮影監督に贈られる三浦賞を受賞。東海地方の新しい才能を応援しようと、名古屋在住の柿沼岳志監督『evidence』('07)『貌(かお)』('13)を担当するほか、本作の監督ジョン・ウィリアムズのプロデュース作品『茜色の約束』('12/塩崎祥平監督)でも撮影を担当。なお本作は10年ぶりのジョン・ウィリアムズ監督作品撮影。

音楽:スワベック・コバレフスキ Score:Slavek Kowalewski

1979年、ポーランド生まれ、10歳でドイツに移住。ピアノ奏者、作曲家、プロデューサー。'85年頃よりピアノを始め、2006年オランダConservatorium van Amsterdam音楽院ピアノ科卒業、映画音楽の作曲、ミュージックテクノロジーを学ぶ。ヨーロッパ、アジア各地での演奏活動を経て、現在は東京在住で、映画、テレビ、CMの作曲家として活動。'04年に短編映画『Doors』に音楽をつけて以来、短編やドキュメンタリー映画をメインに音楽を担当。本作は初の長編となる。

プロデューサー:塩崎祥平 Producer:Shohei Shiozaki

1981年、奈良県大和郡山市生まれ。サンノゼ州立大学にて映画製作とメディアを学ぶ。6年間を米国で過ごして帰国。制作通訳や演出助手を務め、初監督短編『おとうさんのたばこ』('07)が、ハリウッドで開催されたPictures Battle × Show Biz Japan 2008グランプリを受賞。現在は、塩崎の才能を評価するジョン・ウィリアムズの百米映画社に籍を置き、本作で初プロデューサー。長編劇映画初監督作品『茜色の約束(仮題)』はご当地先行公開で大和郡山市民全員が複数回観たとされる盛況ぶりで、全国公開待機中。