SADO TEMPEST 映画「佐渡テンペスト」公式サイト

作品情報

2009年、フィルムコミッション佐渡(FC佐渡)の招待で、初めて佐渡を訪れた時から始まり、'10年にプリプロダクションに入った。翌'11年3月、撮影開始5日目に東日本大震災が起き、福島第一原発が爆発した。その後数日間、何が起こっているか皆目わからなかった。たくさんの映画のプロジェクトが無くなった。しかし、当時東京にいた本作出演の俳優たちは準備を進めてくれていたのだ。大室役の本田博太郎が「映画を完成させなければだめだ。そしてエンディングは希望のメッセージを込めなければ」と後押しをしてくれた。4月初旬に冬のシーンの撮影を1日オーバーしてクランクアップ、5月にラストの桜を撮影しに再び佐渡に戻り、7月にフラッシュバックの内陸部の原生林の場面を撮影して、撮影はすべて終えた。ポストプロダクションを数か月延期することになったが、2012年7月完成。'12年夏「鼓童のアースセレブレーション」で国内プレミア、'12年10月にロンドンのレインダンス映画祭で海外プレミア上映。'13年2月16日より渋谷ユーロスペースで劇場上映。


佐渡で全編撮影された初の長編劇映画である。冒頭の近未来の東京でのコンサートシーンも佐渡で撮影された。ストーリーもFC佐渡の人たちと一緒に作っていった。そんな中から、シェイクスピアの戯曲『テンペスト』と順徳天皇の話をブレンドすることになった。また、トキが登場する単なるご当地映画ではなく、佐渡の”心“を描くエンターテインメント映画を作ろうということになった。都会の若者たちと、奥深い佐渡の自然と歴史と文化とをつなぐような映画にしようと考えた。


シェイクスピアの戯曲『テンペスト』は幻想的で魔術的な魅力にあふれている。物語は、プロスぺロと娘のミランダは宮廷の陰謀の果て、自国を追放されて奇妙な島に流れつく。プロスぺロは島を支配する魔女を魔術でねじ伏せ、精霊アリエルと魔女の息子カリバンを支配下に置く。敵に復讐を果たすため、アリエルの力を使って大嵐を引き起こし、敵の船を難破させ島におびき寄せる。だが、純真な娘ミランダは敵の息子である王子と恋に落ち、プロスぺロの復讐計画が覆される。プロスぺロは魔法を捨て、復讐を放棄して、娘と王子の結婚を許すというもの。これまでも、ジュリー・テイモア、ピーター・グリーナウェイ、デレク・ジャーマン、ポール・マザースキーといった有名監督たちにより映画化され、日本では蜷川幸雄演出の舞台で有名な作品。

本作の要は、主演のロックバンドとその音楽。多くのレコード会社や音楽事務所がこれぞというバンドを推薦してくれた、一方でライブには気の遠くなるほど足を運んだ。“ジルバ”のサンプル音源を初めて聴いた時の刺激、そしてライブを体験した時の衝撃。「ジュントクは逸見、音楽はジルバだ」監督とプロデューサーの心は同じだった。レーベルの言いなりにはなれないバンド。単純なロックでなく、ジャズやアフリカンやソウルミュージック等あらゆるジャンルが入り込んだエネルギッシュなサウンド、全力で叩きつける逸見の演劇的パフォーマンスとボーカルが会場ごと爆発しそうな本物だった。趣旨を説明し、脚本を読んでもらい、疑問を解消する…やるならきちんと向き合いたいと願う“ジルバ”が納得するまでの時間が十分に費やされた。