作品情報 About the movie

解説 INTRODUCTION

いつもみんなの心を躍らせてきた アニメ師・杉井ギサブロー 大研究!
「鉄腕アトム」「どろろ」「タッチ」…誰もが夢中になったテレビアニメの数々、
そして『銀河鉄道の夜』で未曾有の頂点に達したアニメーション界の巨人
、杉井ギサブローの素顔に迫ったドキュメンタリー。

手塚治虫がもっとも頼りにした規格外人間。

1940年、沼津市生まれ・原宿育ちのアニメーション監督、日本画家。ディズニーの『バンビ』を見て以来アニメを志し、小学校と同時にマンガを卒業。東映動画で、日本初の総天然色長編漫画映画『白蛇伝』に参加し、やがて虫プロに入社。手塚治虫に深く影響を受け、彼を父のように敬愛する一方、時には臆することなく真っ向から異を唱えもした。杉井に寄せる信頼は、手塚の「ぎっちゃんがもうひとりいてくれたら」との言葉からもうかがえる。23歳の若さで日本初のテレビアニメシリーズ「鉄腕アトム」の演出・作画を担当、「ルパン三世」のパイロット版を制作し、以降「どろろ」「悟空の大冒険」『千夜一夜物語』など常に新しい表現を追求していく。’69年、アニメーション制作会社、グループ・タックの設立に参加し、劇場用映画に携わるも、やがて10年にわたる放浪の旅へーー。復帰後には『銀河鉄道の夜』『源氏物語』「タッチ」といった鮮烈な作品群でブランクを吹き飛ばし、21世紀の今、9.11を見聞きし、3.11を経験した私たちに『グスコーブドリの伝記』を手渡そうとしている。杉井ギサブロー、72歳は走り続ける!

意欲と情熱の日本アニメーション史がここに。

杉井の人生は戦後日本のアニメーション史そのもの。手塚治虫、大塚康生、山本暎一、りんたろうといったアニメ史上の有名人たちが証言し、数々の名作アニメ映像が挿入される。それまで子供が見るものでしかなかったアニメを日本の一大産業に育てていった人々とその時代。その中心に居続けるアニメーション界の巨人・杉井。本作では、そんな彼の姿とともに、職人的な情熱と創意工夫に満ちたアニメ現場が描き出され、日本アニメーションの歴史が浮かび上がってくる。

「当たらないものを当てたいんだよね」

杉井は言う「当たらなければしょうがない。エンターテイメントなんだから。でも、誰も当たらないと思ってるもので当てたいよね」。自らを“芸人”と称し、お客の要望に応じていかなるものも作る。だから“杉井アニメ”という呼称はない。一目で分かるようなスタイルやジャンル、画風といったものは、杉井のアニメーションには存在しないのだ。同様に、杉井は徒党を組まず、君臨しようともしない。より面白いものを作るために孤高の職人でいるだけだ。まず「壊す」、そして何度でも「壊す」。挙句にこのパンクなアニメ師は言う「俺に任せろってんだ」と。

待望の石岡正人ドキュメンタリー最新作。

対象と一定の距離を保ちながら、存在に寄り添い侵すことなく内面に肉迫するという、ドキュメンタリー監督としての石岡正人(『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』)の本領が遺憾なく発揮された本作。目線はあくまでも石岡らしい優しさをにじませながら、同時に信頼や尊敬、あるいは畏怖を堪え、あたかも自身のハードルとしての兄貴を見つめるがごときだ。本作は、杉井の人生哲学を歩んでみようとする石岡の旅の記録でもある。

たまには、スケールのでかい人間を見てみよう。
“私たちにはまだまだ数多くのいいことが待っているはずだ”ということに
気づかせてくれる。それが、
私たち自身の中に眠っている“何か”なのだということも。